○国立大学法人弘前大学研究者行動規範

平成19年6月25日

役員会決定

第1 はじめに

科学研究上の不正行為は、科学者として倫理にもとる行為であり、これを行った研究者は倫理的に非難される。しかも、これにとどまらず、国立大学法人弘前大学(以下「本学」という。)に所属する研究者が不正行為を行うことは、職員の体面を汚すとともに、本学に対する名誉と信用を傷つけることにより、本学に重大な損害を与えるものである。

本学研究者行動規範(以下「行動規範」という。)は、「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」(平成18年8月8日科学技術?学術審議会研究活動の不正行為に関する特別委員会)及び「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日文部科学大臣決定)に基づき、本学における研究者(以下「研究者」という。)による研究活動の不正行為(以下「不正行為」という。)の防止を図ることを目的として、本学における研究活動の行動規準及び遵守事項を定めるものである。

第2 研究者

この規範において、研究者とは、本学に雇用されている者及び本学に雇用されているとみなされる者並びに本学の施設?設備を利用する者で研究に携わる者をいう。

第3 研究者の責任

研究者は、先達の知的成果を前提としながら自らが生み出す専門知識や技術の質を担保する責任を有し、さらに自らの専門知識、技術、経験を活かして、人類の健康と福祉、社会の安全と安寧、そして地球環境の持続性に貢献するという責任を有する。

第4 研究者の姿勢

研究者は、常に正直、誠実に判断、行動し、自らの専門知識?能力?技芸の維持向上に努め、科学研究によって生み出される知の正確さや正当性を科学的に示す最善の努力を払う。

第5 社会の中の科学者

研究者は、科学の自律性が社会からの信頼と負託の上に成り立つことを自覚し、科学?技術と社会?自然環境の関係を広い視野から理解し、適切に行動する。

第6 社会的期待に応える研究

研究者は社会が抱く真理の解明や様々な課題の達成へ向けた期待に応える責務を有する。研究環境の整備や研究の実施に供される研究資金の使用にあたっては、そうした広く社会的な期待が存在することを常に自覚する。

第7 説明と公開

研究者は、自らが携わる研究の意義と役割を公開して積極的に説明し、その研究が人間、社会、環境に及ぼし得る影響や起こし得る変化を評価し、その結果を中立性?客観性をもって公表すると共に、社会との建設的な対話を築くように努める。

第8 科学研究の利用と両義性

研究者は、自らの研究の成果が、研究者自身の意図に反して破壊的行為に悪用される可能性もあることを認識し、研究の実施、成果の公表にあたっては、社会に許容される適切な手段と方法を選択する。

第9 不正行為

「不正行為」とは、科学研究上の不正行為であり、研究の提案、実行、見直し、及び研究結果を報告する場合における、次に掲げる行為をいう。ただし、根拠が示されて故意でないと明らかにされたもの及び意見の相違は不正行為に含まないものとする。

(1) 捏造:存在しないデータや研究結果などを作成すること、又はこれら作成したものを記録、報告、論文などに利用すること。

(2) 改ざん:研究資料?機器?過程を変更する操作を行い、データや研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工したり、それを記録すること。またそのような真正でない変更あるいは変造したデータ、結果などを用いて研究の報告、論文などを作成、発表すること。

(3) 盗用:他の研究者のアイディア、分析、解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること。

(4) 前3号までに掲げる不正行為に準ずる著しく悪質な行為(他の学術誌等に既発表又は投稿中の論文と本質的に同じ論文を投稿する二重投稿、一編の研究論文を発表可能な最小単位に分割し、同一の研究から複数の論文投稿を行うサラミ論文、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップ及び悪質な意図に基づく論文等の不引用など)

(5) 前4号までに掲げる不正行為が指摘された際の、当該不正行為の証拠隠滅、立証妨害、追試又は再現を行うために不可欠な実験記録等の資料の隠蔽、廃棄、滅失、未整備。

第10 行動規準

研究者は、自らの研究の立案?計画?申請?実施?報告などの過程において、本規範の趣旨に沿って誠実に行動する。研究成果を論文などで公表することで、各自が果たした役割に応じての功績の認知を得ると共に責任を負わなければならない。また、法令?社会的規範及び次にあげる事項を遵守し、公正な環境の確立?維持も自らの重要な責務であることを自覚し、科学者コミュニティ及び自らの所属組織の研究環境向上、ならびに不正行為抑止の教育啓発に継続的に取り組む。また、これを達成するために社会の理解と協力が得られるよう努める。

(1) 不正行為を行わないこと。

(2) 不正行為に加担しないこと。

(3) 周りの者に不正行為をさせないこと。

(4) 研究への協力者の人格、人権を尊重し、福利に配慮すること。

(5) 動物などに対しては真摯な態度でこれを扱うこと。

第11 他者との関係

研究者は、他者の成果を適切に批判すると同時に自らの研究に対する批判には謙虚に耳を傾け、誠実な態度で意見を交える。他者の知的成果などの業績を正当に評価し、名誉や知的財産権を尊重する。また、科学者コミュニティ、とくに自らの専門領域における科学者相互の評価に積極的に参加する。

第12 社会との対話

研究者は、社会と科学者コミュニティとのより良い相互理解のために、市民との対話と交流に積極的に参加する。また、社会の様々な課題の解決と福祉の実現を図るために、政策立案?決定者に対して政策形成に有効な科学的助言の提供に努める。その際、科学者の合意に基づく助言を目指し、意見の相違が存在するときにはこれを解り易く説明する。

第13 科学的助言

研究者は、公共の福祉に資することを目的として研究活動を行い、客観的で科学的な根拠に基づく公正な助言を行う。その際、科学者の発言が世論及び政策形成に対して与える影響の重大さと責任を自覚し、権威を濫用しない。また科学的助言の質の確保に最大限努め、同時に科学的知見に係る不確実性及び見解の多様性について明確に説明する。

第14 政策立案?決定者に対する科学的助言

研究者は、政策立案?決定者に対して科学的助言を行う際には、科学的知見が政策形成の過程において十分に尊重されるべきものであるが、政策決定の唯一の判断根拠ではないことを認識する。科学者コミュニティの助言とは異なる政策決定が為された場合、必要に応じて政策立案?決定者に社会への説明を要請する。

第15 差別の排除

研究者は、研究?教育?学会活動その他社会活動において、人種、ジェンダー、地位、思想?信条、宗教などによって個人を差別せず、科学的方法に基づき公平に対応して、個人の自由と人格を尊重する。

第16 遵守事項

1 研究者は、研究の実施、研究費の使用にあたっては法令及び関係規則等を遵守しなければならない。

2 健全な研究活動を保持し、かつ、不正行為が起こらない研究環境を形成するため、原則として各研究チームの責任者、若しくは各研究室及び各部局は次に掲げる事項を遵守しなければならない。

(1) 各研究室及び研究チームなどにおいて、研究レポート、各種計測データ、実験手続きなどに関し、適宜確認すること。

(2) 研究者は、ラボノートブックなどが個人の私的記録ではなく、本学に帰属し、管理すべきものであるという意識を持たせるとともに、ラボノートブックの記載の方法に関し指導を徹底すること。

(3) ラボノートブックと各種計測データなどを記録した紙や電子媒体などは、論文など成果物の発表後も一定期間保管し、他の研究者からの問い合わせ、調査照会などにも対応できるようにすること。

(4) 論文を共同で発表するときには、責任著者と共著者との間で責任の分担を確認すること。

(5) なお、ラボノートブックの記載方法及び管理方法については、別に定める基準を標準として原則として各部局において、基準等を定めること。

第17 不正行為に係る事実関係の説明責任

研究者で不正行為に係る疑惑を生ぜしめた者は、本学に対し、事実関係を誠実に説明する責任を負う。

第18 利益相反

研究者は、自らの研究、審査、評価、判断などにおいて、個人と組織、あるいは異なる組織間の利益の衝突に十分に注意を払い、公共性に配慮しつつ適切に対応しなければならない。

(平成27年3月20日役員会決定第1号)

この規範は、平成27年4月1日から施行する。

国立大学法人弘前大学研究者行動規範

平成19年6月25日 役員会決定

(平成27年4月1日施行)

体系情報
第11編 ポリシー,指針等/第5章 研究推進部
沿革情報
平成19年6月25日 役員会決定
平成27年3月20日 役員会決定第1号