弘前大学

【プレスリリース】酸塩基指示薬の色と分子構造との関係の混乱に終止符(教育学部)

2019.09.17

弘前大学教育学部の島田 透准教授と京都大学化学研究所の長谷川 健教授らの研究グループは、代表的な酸塩基指示薬*1であるチモールブルー(TB)およびブロモチモールブルー(BTB)の液性(酸性?中性?アルカリ性)に応じた分子構造の決定に成功しました。
TBが水に溶けたTB溶液は、酸性のとき赤色、中性では黄色、アルカリ性においては青色を示すとされています。また、TB分子中の水素2つが臭素に置き変わったBTB分子は、溶液が酸性のとき黄色、中性では緑色、アルカリ性においては青色を示すとされています。
これらの酸塩基指示薬については、初等?中等教育の理科および化学において学習します。とくにBTB溶液は、小学校6年生、中学校1年生?3年生の理科教科書に実験項目としての記載もあり、多くの人にとってなじみのある酸塩基指示薬の一つです。このため、BTB溶液の色と液性の関係(酸性:黄色、中性:緑色、アルカリ性:青色)は、広く知られています。ところが、TB溶液も含め、これらの溶液が示すそれぞれの色がTBやBTB分子のどのような構造に由来しているのかに関しては、これまで混乱がみられ明確ではありませんでした。
本研究では可視吸収分光法*2および量子化学計算*3を用いることで、それぞれの色に対応した分子構造を決定することに成功しました。本研究の成果は、学校教育で使用される教科書に記載されるほど広く知られた内容でさえも、完全には解明されていない部分を含むことを示すものであります。このことは、教科書を使用して日々学習する児童?生徒の科学への興味?関心を引くだけでなく、とくに研究者を目指す児童?生徒にとっては大変な刺激となることが期待されます。また、本研究成果はアメリカの7割の大学で採用される代表的な分析化学教科書の内容を書き換えるものでもあります。

なお、本研究成果は、2019年9月17日公開の日本化学会国際誌「Bulletin of theChemical Society of Japan ( BCSJ ) 」および2017年5月19日公開の科学雑誌「Spectrochimica Acta Part A: Molecular and Biomolecular Spectroscopy」誌に掲載されました。また、BCSJに公開された論文は BCSJ Vol. 92、No.10における優秀論文(Selected Paper)に選出されました。
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