気液界?における多種イオンのミクロ相分離構造の定量的描像
2023.05.08
研究
プレスリリース内容
本学研究者
理工学研究科 物質創成化学科 関 貴一 助教
本件の要点
- 多種イオンを含む水溶液界?におけるイオンの局在構造を、界面選択的な振動分光法とシミュレーションを組み合わせることで定量的に評価することに成功しました。
- 定量的な評価が可能になることで、界面ではイオンの塩析と塩溶が同時に起こっていることを明らかにしました。
- このような多種イオンの水溶液の界面構造が明らかになっていくことで、海水からのヨウ素放出のメカニズムや波飛沫内のイオンの組成がバルクの海水のものと異なる理由などへの理解を深めることができると期待されます。
本件の概要
弘前大学大学院理工学研究科の関貴?助教、マックスプランク?分?研究所(Max-Planck Institute for Polymer Research, Germany)の Mischa Bonn 教授と Yuki Nagata 博?らの共同研究グループは、界面選択的な振動分光法と分?動力学(Molecular dynamics, MD)シミュレーションを組み合わせることで、多種イオンを含む水溶液界?におけるイオンの局在構造を定量的に評価することに成功しました。
空気-水の界面ではバルクと比べて水分?の密度が減少することにより、イオンの水和構造やイオン間のクーロン力の遮蔽長が変化し、イオンの表面活性※1に影響を与えることが知られており、20世紀初頭から単?の電解質の表面活性については詳細な研究が行われてきました。しかし、例えば、バッテリーの効率に重要な影響を与えるポリマーと電解質の界面などの複数種の電解質が存在する界?でのイオンの局在構造は明らかになっていませんでした。この界?は、単純に単?の電解質の界?構造の重ね合わせなのでしょうか。
この疑問に答えるために、共同研究グループは?精細に界面の水分?の水素結合構造を認識する和周波発生振動分光法(sum-frequency generation spectroscopy, SFG)※2を用い、イオンが界面の水素結合環境に残した「足跡」を定量的に判定することで、親水性イオンの存在により疎水性イオンがより界面に押し出され、その一方で親水性イオンがバルクに押し下げられていることを明らかにしました(図1)。また、MDシミュレーションとの定量的な?較により、水和エネルギーがこの界面におけるイオンのミクロ相分離の重要なパラメータであることを突き?めました。
本研究成果は?国化学会誌『 Journal of the American Chemical Society』にオンライン掲載されました。(2023年5?4?)
用語解説
- ※1 表?活性:界?活性とも呼ばれ、ここでは表?または界?への吸着しやすさを指す。
- ※2 和周波発?振動分光法(sum-frequency generation spectroscopy, SFG):?次の?線形光学効果を?いた界?選択的な振動分光法である。対象とする界?に中?外光と可視光のレーザーパルスを照射することで、反転対称性の破れた界?分?構造から、分?の振動情報(例えば?分?の O-H 伸縮振動モードなど)がエンコードされたSFG信号が発?する。検出される信号は振動?の複素数である?次の?線形感受率の?乗であり、位相の情報は失われている。
今後の展望
本成果は、界面のイオンの局在性を、これまでの定性的な理解から、定量的な理解へと深化させる重要な結果です。?然科学的な側?だけでなく、このような観点から触媒や電極近傍のイオンの局在性が明らかになれば、エネルギーデバイスやセンサーなどの合理的な設計による性能向上につながると期待されます。
論文情報
- [論?名]Ions Speciation at the Water-Air Interface
- [著書名] Takakazu Seki(関 貴?) 1,2, Chun-Chieh Yu2, Kuo-Yang Chiang2, Alessandro Greco2, Xiaoqing Yu2, Fumiki Matsumura2, Mischa Bonn2, and Yuki Nagata2
- 1.弘前?学?学院理?学研究科
- 2.Max-Planck Institute for Polymer Research (マックスプランク?分?研究所、ドイツ)
- [雑誌名] Journal of the American Chemical Society
- [DOI] 10.1021/jacs.3c00517
プレスリリース
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本学お問合せ先
弘前大学大学院 理工学研究科 助教 関 貴一
TEL:0172-39-3947
E-mail:tsekihirosaki-u.ac.jp